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微生物の未来 〜 その9 微生物のコミュニティ 〜

社員ブログ tsu

こんにちは、tsuです。

寒い日が続きますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?

正月早々、能登半島周辺における地震が発生したり、半世紀にわたる逃亡を続けた連続企業爆破事件に関わったとされる指名手配犯が突如でてきたりと、

驚くことばかりでした。地震については、熊本地震を経験した身からすると身が引き裂かれるような思いです。

早くいつもの日常が戻れるように、私もなにか力になれればと思います。

 

1.はじめに

前回、微生物ネットワーク(前回の記事はこちら)について説明しました。その際、集団でいることの意味を少しお伝えしましたが、

今回は、もう少し具体的に『微生物集団が形成するコミュニティ』について見ていこうかと思います。

 

微生物コミュニティを一言で表すと『マイクロバイオーム』と言います。

これは微生物叢ということですが、水中や土壌中、わたしたちの皮膚上や体の中存在している微生物の集団を指します。

この集団に存在する微生物は1種類ではなく、多種多様な微生物が存在しており、

それぞれの微生物が程よいバランスを保ちながら周囲の環境に影響を与えています。

 

2.人との関わり

ここ何年かでヒトの腸内細菌に関する研究が大きく飛躍してきて、関連する論文も年間数千件発表されています。

ヒトの腸内には約1,000種、約100兆個の細菌が存在すると言われており、これらの微生物同士がコミュニティを形成しているのです。

これらの微生物が産生する物質が腸内環境を整えるだけではなく、血液や神経を介して全身の健康状態にも影響していることがわかり始めました。

例えば、次のような疾患や病態に関連していると考えられています。

不眠
うつ病
自閉症
パーキンソン病
動脈硬化
糖尿病
肥満
炎症性腸疾患
クローン病
リウマチ
肌荒れ
アトピー性皮膚炎

もしかすると、微生物の環境を変えていくことによって、これらの疾患などを改善または、治療することにもつながるかもしれません。

その例として、第4のがん治療と言われる免疫療法では、その効果が現れる患者が20%程度にとどまっているようですが、原因の一つには、腸内細菌のマイクロバイオームが関与していることが報告されています。

 

3.マイクロバイオームが期待されていること

先述したように、マイクロバイオームは人の健康に大きく寄与する可能性が示されています。そのため、病気の発症メカニズム解明や予防・治療法の開発、ヘルスケアへの貢献に期待されています。

例えば、腸内マイクロバイオームを制御するような次世代創薬技術の開発が進んでおり、現在、薬としてのガイドラインを固めつつある状況です。

また、マイクロバイオーム農業という言葉も出始めており、微生物の集団を活用した農業に注目が集まっています。アメリカの企業ではこのマイクロバイオーム農業を販売している会社もあるようです。

 

4.ヘルスケア分野におけるマイクロバイオームの活用

微生物を活用した美容と健康への応用が注目され、今後、こういった技術を使った化粧品や健康食品の登場が当たり前になるのかもしれません。

現在の化粧品や健康食品は、ある特定の成分をつかって効能を謳っていますが、これからはある特定の成分ではなく、この菌集団だからこういう効果が期待できますよといったことができるようになるのかもしれません。

腸内細菌を改善するための食品やサプリメント、何らかの疾患を改善するためのサプリメントなど活用の幅はだんだん広がっていきそうです。

 

5.最後に

弊社は近年、このマイクロバイオームに注目し、生活環境や農業への応用を研究しています。

生活環境における微生物集団を改善することにより、環境への悪影響を和らげたり、

人体への悪影響も減少させるなど、活用方法は多くの場面で存在します。

また、水中の微生物環境を整えていくことで、生き物が生きやすい環境へ改善することも可能かもしれません。

このように弊社では、微生物を通して、より良い環境に改善することを目指しています。

そして、その技術を応用して、ヘルスケア分野にも挑戦したいと思っています。

 

 

 


tsu

研究部に所属するtsuです。時々、社内SEもしています。 研究開発に従事する傍ら、データ分析やアプリケーション開発、データサイエンス関係もしています。研究分野とIT分野を融合するような活動も していきたいですね。 専門はバイオテクノロジーです。