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微生物の未来 〜 その11 微生物が作る薬 〜

社員ブログ tsu

こんにちは、tsuです。

早いもので9月も終わり、10月に入ろうとしています。

熊本では、朝晩の気温が25℃前後まで下がりましたが、

日中はまだ30℃を超える日もあります。

やっと夏も終わるかと思いつつ、残暑も気をつける必要がありそうですね!!

 

1.はじめに

前回、微生物が大きな影響を与える可能性がある分野(前回の記事はこちら)について、説明させていただきました。

その中でも少し触れましたが、今回は微生物がつくる薬、バイオ医薬品について、

ご紹介していきたいと思います。バイオ医薬品は、薬自体の効果が高いわりには副作用が少なく、

適用できる疾患の領域が広いという特徴があります。ただし、原材料や設備などの費用が高く、

一般的な医薬品と比べ、高価な傾向にあります。

 

2.微生物が医薬品として利用される事例

微生物はさまざまな物質を産生する能力を持ち、人工的に合成が難しいような物質を

作り出すこともできます。そのため、これまで合成していた医薬品を微生物に作らせる

という傾向になっています。ここでは、代表的な事例を挙げていきます。

1. 抗生物質

抗生物質は、微生物によって産生される天然の化合物で、病原菌の成長を抑制または殺菌する作用があります。以下はその代表例です。

  • ペニシリン:1928年にアレクサンダー・フレミングがペニシリウム属のカビから発見しました。細菌の細胞壁合成を阻害し、特にグラム陽性菌に効果的です。
  • ストレプトマイシン:放線菌(ストレプトマイセス属)が産生する抗生物質で、結核菌やその他の細菌に対して使用されます。

2. 免疫抑制剤

  • シクロスポリン:カビ(トリコデルマ・ポリスポルム)が産生する物質で、臓器移植の際に免疫反応を抑制するために使われます。これにより移植臓器が拒絶されるのを防ぎます。

3. 抗がん剤

  • ドキソルビシン:放線菌(ストレプトマイセス属)から得られる化合物で、さまざまな種類のがん治療に使われています。細胞のDNA合成を阻害することで、がん細胞の増殖を防ぎます。

4. ビタミン生産

  • ビタミンB12:プロピオン酸菌やクロストリジウムなどの細菌がビタミンB12を生産します。ビタミンB12は、貧血や神経障害の治療に重要です。

5. ワクチンの製造

微生物は、ワクチンの製造にも利用されます。特定の病原体の一部を微生物に作らせ、それを使って体内の免疫反応を誘導します。

  • B型肝炎ワクチン:酵母を使ってウイルス抗原を産生し、それを精製してワクチンとして使用します。

6. 酵素補充療法

  • ラクトアーゼ:ラクターゼ(乳糖分解酵素)は、乳糖不耐症の人々に対して利用され、乳製品の消化を助けます。ラクトアーゼは微生物を使って生産されることが多いです。

 

3.まとめ

このように、微生物は生体に有用な物質を作り出すことができます。これはゲノム解析の技術やゲノム編集技術が発展きたことにより、実現してきたと言えるでしょう。医薬品分野においても重要な役割を果たし、新しい治療法の開発や病気の予防が可能になってきています。

現在、世界中の医薬品メーカーは微生物のチカラを日々探求し続けています。まさに、菌(微生物)の中から宝を探すように金脈を探していると言えるのかもしれません。また、これまでの医療は病気になった後に治療するということが当たり前でしたが、これから先の未来、病気を予防するということが当たり前になるかもしれません。その一端に微生物が関わっているということが言えます。

我々ビッグバイオは微生物を使った日曜雑貨製品を製造するメーカーですが、将来的にはもっとより良い形で、微生物の能力を最大限に活かした製品で皆様のお役に立てる日が来ることを思い、日々の研究に励んでいます。


tsu

研究部に所属するtsuです。時々、社内SEもしています。 研究開発に従事する傍ら、データ分析やアプリケーション開発、データサイエンス関係もしています。研究分野とIT分野を融合するような活動も していきたいですね。 専門はバイオテクノロジーです。