微生物の未来 〜 その6 代謝と分解 〜
こんにちは。ビッグバイオ研究部のtsuです。
熊本では、朝晩が冷え込んできましたが、日中はまだまだ暑い日が続いています。
秋の足音が来たかと思えば、すぐに冬が到来しそうな雰囲気です。皆さんのお住まいの地域ではいかがでしょうか?
会社に大きな木があるのですが、3日前にまだツクツクボウシの鳴き声が聞こえていました。
スズムシなどの秋の音色と、セミの夏の音色が同時に聞こえた不思議な朝でした。朝の涼しい時間に、秋の音色を聞きながらゆっくりと本を読む時間も最高ですよ!!
- はじめに
実は、微生物は、高等な動植物が利用できないようなさまざまな物質を分解、代謝して、生態系に有益な栄養源をもたらすことができます。
この分解、代謝によって得られた物質は、環境浄化に使われたり、動植物が利用できる物質に変化していたりします。
今回は、微生物が持つ分解機能と代謝機能について見ていくことにしましょう。
- 代謝とは?
そもそも代謝とは何でしょうか?ほとんどの生物に共通する化学反応で、生命を維持するために行われる合成反応のことです。
その目的には、
- エネルギーを獲得すること
- 摂取した栄養素を、体を構成するための前駆体へ転換する
- 前駆体から体のエネルギーにするために合成する
- 細胞が使う生理活性物質を合成または、分解する
主にこれら4つがあります。
例えば、活動するためのエネルギーを作り出す解糖系という代謝経路が存在します。
これはグルコースからいくつかの物質を経由し、ATPと呼ばれるエネルギーが生産されます。
また、有名な代謝機能として発酵や呼吸、そして、光合成のような光化学反応があります。
これらの他にも、ヌクレオチド、アミノ酸、脂肪酸の合成も代謝機能によるものです。
解糖系の化学式及び模式図(wikipediaより参照)
つまり代謝とは、新陳代謝を意味し、
A ⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒ B
Aという物質から始まり、複数の反応を繰り返した後、Bという新たな物質を作り出して利用することになります。
- 分解とは?
一般的な分解は、
A ⇒ B + C
に分かれることをいいます。
微生物が分解するということは、微生物の消費活動によって物質を分解し、自然に還ることと言って良いかもしれません。
何か大きな物を小さい物に変換するというイメージを持たれると良いでしょう。
- 微生物を利用することが可能性を広げる!!
微生物の代謝機能と分解機能を探ることは、微生物を利用する可能性を広げてくれます。
実は、代謝と分解は非常に密接な関係にあり、微生物はこれらを同時に行い、生命活動をしていると言えます。
微生物の代謝や分解により産生される産物の正体については、数多く研究され、どの微生物が何を産生するのかということが多くわかってきています。
しかしながら、微生物の細胞内で、その産物がどのような経路を経て、どのように作られているのかということはまだまだ知られていないことが多く存在します。
最近の研究では、ゲノム科学の発展により、遺伝子情報を簡単にかつ大量に調べることができるようになりました。
その結果、これまで知られていなかった代謝機能が解明されつつあり、こんなこともできるのかと言った驚きを与えています。
我々も日々研究に取り組む中で、未知との遭遇を果たします。
こういった未知との遭遇が、微生物の可能性を広げ、新しい環境浄化技術につながるかもしれません。
そしてそこは、微生物が持つ代謝機能と分解機能が切っても切り離せない世界があります。