お知らせ・ブログ

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微生物の未来 〜 その11 微生物が作る薬 〜

社員ブログ tsu

こんにちは、tsuです。

早いもので9月も終わり、10月に入ろうとしています。

熊本では、朝晩の気温が25℃前後まで下がりましたが、

日中はまだ30℃を超える日もあります。

やっと夏も終わるかと思いつつ、残暑も気をつける必要がありそうですね!!

 

1.はじめに

前回、微生物が大きな影響を与える可能性がある分野(前回の記事はこちら)について、説明させていただきました。

その中でも少し触れましたが、今回は微生物がつくる薬、バイオ医薬品について、

ご紹介していきたいと思います。バイオ医薬品は、薬自体の効果が高いわりには副作用が少なく、

適用できる疾患の領域が広いという特徴があります。ただし、原材料や設備などの費用が高く、

一般的な医薬品と比べ、高価な傾向にあります。

 

2.微生物が医薬品として利用される事例

微生物はさまざまな物質を産生する能力を持ち、人工的に合成が難しいような物質を

作り出すこともできます。そのため、これまで合成していた医薬品を微生物に作らせる

という傾向になっています。ここでは、代表的な事例を挙げていきます。

1. 抗生物質

抗生物質は、微生物によって産生される天然の化合物で、病原菌の成長を抑制または殺菌する作用があります。以下はその代表例です。

  • ペニシリン:1928年にアレクサンダー・フレミングがペニシリウム属のカビから発見しました。細菌の細胞壁合成を阻害し、特にグラム陽性菌に効果的です。
  • ストレプトマイシン:放線菌(ストレプトマイセス属)が産生する抗生物質で、結核菌やその他の細菌に対して使用されます。

2. 免疫抑制剤

  • シクロスポリン:カビ(トリコデルマ・ポリスポルム)が産生する物質で、臓器移植の際に免疫反応を抑制するために使われます。これにより移植臓器が拒絶されるのを防ぎます。

3. 抗がん剤

  • ドキソルビシン:放線菌(ストレプトマイセス属)から得られる化合物で、さまざまな種類のがん治療に使われています。細胞のDNA合成を阻害することで、がん細胞の増殖を防ぎます。

4. ビタミン生産

  • ビタミンB12:プロピオン酸菌やクロストリジウムなどの細菌がビタミンB12を生産します。ビタミンB12は、貧血や神経障害の治療に重要です。

5. ワクチンの製造

微生物は、ワクチンの製造にも利用されます。特定の病原体の一部を微生物に作らせ、それを使って体内の免疫反応を誘導します。

  • B型肝炎ワクチン:酵母を使ってウイルス抗原を産生し、それを精製してワクチンとして使用します。

6. 酵素補充療法

  • ラクトアーゼ:ラクターゼ(乳糖分解酵素)は、乳糖不耐症の人々に対して利用され、乳製品の消化を助けます。ラクトアーゼは微生物を使って生産されることが多いです。

 

3.まとめ

このように、微生物は生体に有用な物質を作り出すことができます。これはゲノム解析の技術やゲノム編集技術が発展きたことにより、実現してきたと言えるでしょう。医薬品分野においても重要な役割を果たし、新しい治療法の開発や病気の予防が可能になってきています。

現在、世界中の医薬品メーカーは微生物のチカラを日々探求し続けています。まさに、菌(微生物)の中から宝を探すように金脈を探していると言えるのかもしれません。また、これまでの医療は病気になった後に治療するということが当たり前でしたが、これから先の未来、病気を予防するということが当たり前になるかもしれません。その一端に微生物が関わっているということが言えます。

我々ビッグバイオは微生物を使った日曜雑貨製品を製造するメーカーですが、将来的にはもっとより良い形で、微生物の能力を最大限に活かした製品で皆様のお役に立てる日が来ることを思い、日々の研究に励んでいます。


tsu

研究部に所属するtsuです。時々、社内SEもしています。 研究開発に従事する傍ら、データ分析やアプリケーション開発、データサイエンス関係もしています。研究分野とIT分野を融合するような活動も していきたいですね。 専門はバイオテクノロジーです。

微生物の未来 〜 その10 大きな影響を与える可能性がある分野 〜

社員ブログ tsu

こんにちは、tsuです。

5月も終わりに近づき、6月に入ろうとしています。

沖縄・奄美地方は5月21日ころに梅雨入りしているようですね。

いつ梅雨入りして、いつ梅雨明けするのかはっきしないことが多くなりましたが、

また蒸し暑い季節がやってきますね。日本の気候を楽しんでいきたいものです。

 

1. はじめに

前回、微生物が形成するコミュニティ(前回の記事はこちら)に関して、説明させていただきました。

ヒトの健康から工業、農業への応用も期待でき、さまざな分野に影響を及ぼすことが期待されています。

そこで今回は、微生物研究が大きな影響を与える可能性がある分野をご紹介していきたいと思います。

 

2. 分野について紹介

2-1. 微生物ゲノミクスとメタゲノミクス

  • 進展
    • 次世代シーケンシング技術の進化により、微生物ゲノムの迅速かつ低コストな解析が可能となります。
    • これにより、微生物の多様性、機能、進化についての理解が深まります。
  • 応用
    • 環境中の微生物群集の構成と機能を解明することで、環境モニタリングやバイオレメディエーション(生物的修復)に役立ちます。
    • また、ヒトのマイクロバイオーム研究も進展し、健康や疾患との関連性が明らかになります。

2-2. 合成生物学とバイオエンジニアリング

  • 進展
    • 合成生物学は、遺伝子回路の設計や人工遺伝子の合成を通じて、新しい機能を持つ微生物を創り出す技術です。
    • 特定の目的に適した機能を持つ微生物を創り出すことができます。
  • 応用
    • バイオ燃料、バイオプラスチック、医薬品の生産、環境浄化など、さまざまな産業で利用可能な微生物を設計・構築することが期待されます。
    • 人工知能やビッグデータを利用することで、特定のマイクロバイオームプロファイルに基づいた治療法や予防策が開発されます。
    • また、医療に関することかけではなく、環境や農業においても特定のマイクロバイオームプロファイルに基づいた改善方法が開発されます。

2-3. 抗生物質耐性と新規抗菌剤の開発

  • 進展
    • 抗生物質耐性菌の増加は、世界的な健康問題となっています。
    • 新規抗菌剤の探索と開発は、緊急の課題です。
  • 応用
    • 放線菌やその他の微生物から新しい抗生物質を発見する研究が進んでいます。
    • また、既存の抗菌剤の代替として、ファージ療法(バクテリオファージを用いた治療法)やプロバイオティクスの利用も検討されています。

2-4. 微生物と持続可能性

  • 進展
    • 微生物の利用は、持続可能な資源管理と環境保護に貢献できます。
    • 微生物を利用した持続可能な農業技術の開発が進みます
  • 応用
    • 農業における土壌改良や植物病害防除、廃棄物のバイオリサイクル、温室効果ガスの削減など、多くの環境問題に対する解決策が提供されます。
    • バイオ肥料、バイオ農薬、土壌改良剤としての微生物の利用、環境汚染のバイオレメディエーション技術などが発展します。

2-5. 微生物と健康

  • 進展
    • ヒトのマイクロバイオーム研究は、微生物が健康や疾患に与える影響を理解するための重要な分野です。
  • 応用
    • マイクロバイオームのバランスを調整することで、消化器系疾患、免疫疾患、メンタルヘルスなどに対する新しい治療法が開発されます。

2-6. 極限環境微生物の研究

  • 進展
    • 深海、極地、熱水噴出孔などの極限環境に生息する微生物の研究が進んでいます。
    • これらの微生物は、独自の生理・生化学的特性を持ち、未知の酵素や代謝経路の発見が期待されます。
  • 応用
    • バイオテクノロジーや医薬品開発において、新しい触媒や耐性物質として利用される可能性があります。
    • これらの微生物から得られる耐熱性酵素や耐薬剤性物質は、産業や医療の分野で革新的な応用が期待されます

2-7. 人工知能とビッグデータの利用

  • 進展
    • 人工知能(AI)とビッグデータ解析は、膨大な量の微生物データの解析と理解を可能にします。
    • AIとビッグデータ解析の導入により、膨大な微生物データの解析が容易になり、新たな知見が得られます。
  • 応用
    • 病原菌の検出や診断、微生物の機能予測、創薬のターゲット選定など、様々な分野で活用されます。
    • 新規抗菌剤の設計、環境モニタリングの高度化など、多岐にわたる応用が期待されます。

2-8. クリーンエネルギーの生産

  • 進展
    • 微生物を利用したバイオ燃料の生産技術が進みます。
    • 特に、藻類やメタン生成菌などが注目されています。
  • 応用
    • 持続可能なエネルギー源としてのバイオ燃料の商業化が進み、化石燃料の代替としての利用が期待されます。

2-9. 微生物の工業利用

  • 進展
    • 微生物を利用した工業プロセスが増えます。
    • 特に、発酵技術やバイオリアクター技術の進展が期待されます。
  • 応用
    • 酵素の大量生産、バイオプラスチックの製造、化学物質の生産など、環境に優しい工業プロセスの実現が可能になります。

 

3. 最後に

微生物研究は、生命科学、環境科学、医療、農業、工業など多岐にわたる分野で革新的な進展をもたらし、

これからの科学技術と社会の持続可能な発展に大きな貢献をする可能性があります。

技術の進化と共に、微生物の理解と応用がさらに深まり、持続可能な社会の構築に大きく貢献し、

より良い未来を築くための新たな道が開かれるでしょう。


tsu

研究部に所属するtsuです。時々、社内SEもしています。 研究開発に従事する傍ら、データ分析やアプリケーション開発、データサイエンス関係もしています。研究分野とIT分野を融合するような活動も していきたいですね。 専門はバイオテクノロジーです。

微生物の未来 〜 その9 微生物のコミュニティ 〜

社員ブログ tsu

こんにちは、tsuです。

寒い日が続きますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?

正月早々、能登半島周辺における地震が発生したり、半世紀にわたる逃亡を続けた連続企業爆破事件に関わったとされる指名手配犯が突如でてきたりと、

驚くことばかりでした。地震については、熊本地震を経験した身からすると身が引き裂かれるような思いです。

早くいつもの日常が戻れるように、私もなにか力になれればと思います。

 

1.はじめに

前回、微生物ネットワーク(前回の記事はこちら)について説明しました。その際、集団でいることの意味を少しお伝えしましたが、

今回は、もう少し具体的に『微生物集団が形成するコミュニティ』について見ていこうかと思います。

 

微生物コミュニティを一言で表すと『マイクロバイオーム』と言います。

これは微生物叢ということですが、水中や土壌中、わたしたちの皮膚上や体の中存在している微生物の集団を指します。

この集団に存在する微生物は1種類ではなく、多種多様な微生物が存在しており、

それぞれの微生物が程よいバランスを保ちながら周囲の環境に影響を与えています。

 

2.人との関わり

ここ何年かでヒトの腸内細菌に関する研究が大きく飛躍してきて、関連する論文も年間数千件発表されています。

ヒトの腸内には約1,000種、約100兆個の細菌が存在すると言われており、これらの微生物同士がコミュニティを形成しているのです。

これらの微生物が産生する物質が腸内環境を整えるだけではなく、血液や神経を介して全身の健康状態にも影響していることがわかり始めました。

例えば、次のような疾患や病態に関連していると考えられています。

不眠
うつ病
自閉症
パーキンソン病
動脈硬化
糖尿病
肥満
炎症性腸疾患
クローン病
リウマチ
肌荒れ
アトピー性皮膚炎

もしかすると、微生物の環境を変えていくことによって、これらの疾患などを改善または、治療することにもつながるかもしれません。

その例として、第4のがん治療と言われる免疫療法では、その効果が現れる患者が20%程度にとどまっているようですが、原因の一つには、腸内細菌のマイクロバイオームが関与していることが報告されています。

 

3.マイクロバイオームが期待されていること

先述したように、マイクロバイオームは人の健康に大きく寄与する可能性が示されています。そのため、病気の発症メカニズム解明や予防・治療法の開発、ヘルスケアへの貢献に期待されています。

例えば、腸内マイクロバイオームを制御するような次世代創薬技術の開発が進んでおり、現在、薬としてのガイドラインを固めつつある状況です。

また、マイクロバイオーム農業という言葉も出始めており、微生物の集団を活用した農業に注目が集まっています。アメリカの企業ではこのマイクロバイオーム農業を販売している会社もあるようです。

 

4.ヘルスケア分野におけるマイクロバイオームの活用

微生物を活用した美容と健康への応用が注目され、今後、こういった技術を使った化粧品や健康食品の登場が当たり前になるのかもしれません。

現在の化粧品や健康食品は、ある特定の成分をつかって効能を謳っていますが、これからはある特定の成分ではなく、この菌集団だからこういう効果が期待できますよといったことができるようになるのかもしれません。

腸内細菌を改善するための食品やサプリメント、何らかの疾患を改善するためのサプリメントなど活用の幅はだんだん広がっていきそうです。

 

5.最後に

弊社は近年、このマイクロバイオームに注目し、生活環境や農業への応用を研究しています。

生活環境における微生物集団を改善することにより、環境への悪影響を和らげたり、

人体への悪影響も減少させるなど、活用方法は多くの場面で存在します。

また、水中の微生物環境を整えていくことで、生き物が生きやすい環境へ改善することも可能かもしれません。

このように弊社では、微生物を通して、より良い環境に改善することを目指しています。

そして、その技術を応用して、ヘルスケア分野にも挑戦したいと思っています。

 

 

 


tsu

研究部に所属するtsuです。時々、社内SEもしています。 研究開発に従事する傍ら、データ分析やアプリケーション開発、データサイエンス関係もしています。研究分野とIT分野を融合するような活動も していきたいですね。 専門はバイオテクノロジーです。

工場見学

社員ブログ tsu

こんにちは。研究部のtsuです。

日中は30℃を超える日もざらですが、

朝晩が冷えてきて、過ごしやすくなってきました。

幸いにも熊本では中秋の名月を見ることができました。

まん丸でいつもよりも大きい月でしたが、皆さんの地域ではいかがだったでしょうか?

 

さて、9月28日に京都府より同志社大学付属同志社国際学院初等部の3年生の皆さんが、

修学旅行の一環として、ビッグバイオへ工場見学にお越しになりました!

昨年から引き続き、2回目となりました。

今回は、「微生物の未来」シリーズをお休みして、

工場見学の様子をご紹介いたします!!

 

工場見学は、映像による会社の紹介、研究室紹介、そして製造現場の3ヶ所で行い、

3つのグループがそれぞれの場所に移動するという流れで行われました。

今回は研究室の様子をお送りします。

 

今回は、カビ予防・有機物分解などについて説明をしていきました。

 

研究室での様子です。

説明が始まると、真剣にメモをとっていました。

真剣に聞いていただいて嬉しい限りです。

 

研究室の設備について説明している最中です。

 

微生物の行う有機物分解について説明しているところです。

みなさんは、試験管に興味津々です

 

というものです。丸い皿のようなものは、黒カビをBB菌を培養したシャーレというものです。

弊社のBB菌が黒カビを抑えているという説明をしています。

「へー」とか「すごい」と言った声が聞かれました。

 

最後に、皆さん喜んで帰っていかれたので、反応は上々だったかもしれません。

帰る際には、なんと!バスの中から手を降ってくれる方もいらっしゃいました😀

 

今回は、工場見学に様子の一部をご紹介しました。

なかなか不慣れな部分もありましたが、

どうすればわかりやすい説明になるかを何度も推敲を重ね、

準備してきたかいがあったかもしれません。


tsu

研究部に所属するtsuです。時々、社内SEもしています。 研究開発に従事する傍ら、データ分析やアプリケーション開発、データサイエンス関係もしています。研究分野とIT分野を融合するような活動も していきたいですね。 専門はバイオテクノロジーです。

微生物の未来 〜 その8 微生物のネットワーク 〜

社員ブログ tsu

こんにちは。tsuです。

最近、関東から東北、九州でも鹿児島県で地震が続いていますね。

熊本地震を経験した私ですが、今でもあの時のことを鮮明に覚えています。

やはり、「備えあれば憂いなし」で、日頃から非常食や避難場所・経路、家族間の連絡方法などを確認することがとても大切です。

事前準備がある意味、明暗をわけるのかもしれません。

 

1.はじめに

前回、バイオテクノロジーとITが融合することで、新たな可能性をもった研究が始められているとお伝えしました。

これまで微生物の研究というのは、ある1種類の微生物を単離し、この単離してきた微生物について研究を進めていくという形がほとんどでした。

ところが近年、微生物同士や植物同士、さらには微生物と植物間において、それらが産生する化学物質を使って、お互いコミュニケーションを取っていることが明らかになってきました。

そのため単体でいるときよりも、集合して共生関係を形成することで、これまで想像もできなかったような働きをすることが示されつつあります。

そこで今回は、そんな新しい研究分野から派生した「生物ネットワーク」と呼ばれる分野、つまり微生物間の共生関係が何を意味するのかをご紹介したいと思います。

 

2.生物ネットワークとは?

Oxford Languagesによれば、ネットワークは、「通信・放送・輸送などに関し、連絡を保って網状になっている構成」という意味があります。一般的には、このような意味で使われていると思います。では、生物ネットワークとはどのような意味なのでしょうか?

生物におけるさまざまな生命現象や病気の発症などは、遺伝子、タンパク質、代謝化合物といった、さまざまな生体分子が複雑な相互作用を起こした結果となります。また、生物や他の生物や環境と複雑に相互作用することで、生態系を織りなしています。

このように構成された生命現象や生態系の動きのことを「生物ネットワーク」と呼びます。つまり、それぞれの生体分子、生物、そして環境が織りなす相互作用のことになります。

ネットワークのイメージ図

 

3.微生物を活用するには単体?それとも複合体?

微生物を活用した食品と言えば、酒や漬物などがすぐに思いつくのではないでしょうか。

漬物の酸味には乳酸菌が、酒のアルコールには麹菌や酵母菌が使われています。いずれも1種類で発酵させています。

ところが、自然界には微生物が1種類だけで活動していることはなく、ほとんどが何らかの集合体を形成し、共生しています。

土壌中だけではなく、植物体、水中、空気中も同様です。また皮膚の表面に存在する常在菌も1種類だけではなく、複数種類存在していることがわかっています。

微生物1種類だけを活用することは経験的に行われており、非常に身近なことです。

しかしながら、複数種類の微生物が共生することによる意味は、ほとんど解明されておらず、今後さらなる知見が得られることが期待されています。

 

4.微生物が集団で共生する意味とは?

微生物を1種類だけで活用することは、日常的に行われています。

ハチやアリは集団行動することで社会性を見出していますし、ヒトも同様です。

ヒトと同様、多種多様な微生物があり、それらが共生しています。

人種のるつぼ、現在では、人種のサラダボウルという表現が多いかもしれませんが、さまざまな微生物が混在しています。

では、微生物が集団で共生することには、どのような意味があるのでしょうか?

特に社会性を見出すわけでもありません。

2.生物ネットワークで述べたように、生物はさまざまな生体分子を作りながら生命活動をしています。

それは微生物でも同じです。

微生物は種によって作り出すことができる生体分子が限られており、種間によって生体分子の合成に得意、不得意が存在するのです。

この得意、不得意を互いに補うために共生していると考えられています。

現に、ある1つの物質を複数の微生物間で利用しているということも知られつつあります。

要は、いかに効率よく栄養源が得られるような環境に身を置き、生命活動を維持できるかということなのかもしれません。

5.最後に

今回は生物ネットワークを踏まえた微生物のネットワークについて、解説してきましたが、いかがだったでしょうか?

難しく感じられた方もいらっしゃったかと思われますが、簡単に言えば、微生物が集団で共生することは、とても意味があるということを知っていただければ幸いです。

微生物の相互作用をもっと理解することができれば、土壌の改善や空間中の改善、はたまた、環境の改善にもつながるかもしれません。

微生物間の相互作用のバランス、そして数学的な予測モデルを見出すことができれば、環境浄化をするための微生物集団を設計したり、土壌中の微生物集団を再生させたりするための設計も可能になるかもしれません。


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微生物の未来 〜 その7 バイオテクノロジーと情報技術が融合することで・・・ 〜

社員ブログ tsu

こんにちは。ビッグバイオ研究部のtsuです。

全国的な大寒波の影響で、大雪の地域では交通網など、さまざまな影響が出ていましたね。お住まいの地域ではいかがでしたか?

弊社がある熊本でも山間部や海側では雪が積もりました。熊本は車移動が基本にも関わらず雪に慣れていないため、主要道路は大変込み合い、スリップや接触事故が発生していました。また雪で坂道を登ることが難しく、立ち往生している車もありました。

ちなみに弊社の様子です(2023年1月25日8時頃撮影)。

弊社は山の麓にありますが、数cm程度つもりました!!

 

(1) はじめに

日本では、世界でも珍しい発酵食品という文化が存在します。世界ではチーズやピクルス、アンチョビ、ナム・プラー、テキーラなどが有名ですが、日本のように微生物の発酵を利用した食品を複数種類扱っているのは、珍しいのではないでしょうか。

<以下画像はイラスト素材より取得した>

 

 日本では食べ物として馴染み深い微生物ですが、近年、微生物の捉え方が大きく変わろうとしています。これまでは微生物を研究するにあたり、ある1種類のみを分離し、その分離した微生物について研究が行われてきました。もちろん、現在でもこの研究手法は微生物を知るための定石となっています。

 ところが、近年では情報技術(IT)の発展や高性能な分析機器の登場により、大量のデータを一括で取り扱えるようになってきました。これまでは1つのデータに対して1つの解析が必要でしたが、現在は数百、数千といった数のデータを1度の解析で扱えるようになってきたのです。このことが、バイオテクノロジーという分野を大きく発展させ、これまで得られなかった知見が得られるようになってきました。こうして発展してきた結果、微生物の捉え方を大きく変えているのです。

(2)バイオテクノロジーと情報技術(IT)が融合すると・・・

 バイオテクノロジーにおいては、ゲノム解読やゲノム編集といった技術革新があり、急速に発展してきている機械学習や深層学習といった人工知能(AI)の技術革新がありました。

バイオテクノロジーとITとの融合により、バイオテクノロジーが広範囲な産業基盤を支える「バイオエコノミー社会」が世界的に到来すると言われています。

 例の1つとして、合成生物学という分野が挙げられる。この合成生物学とは、幅広い研究領域を統合し、生物の構成要素(組織、遺伝子など)を部品と見なし、それらを組み合わせて生命機能を人工的に設計したり、生物システムを構築したりすることです。

 生物機能をデザインするとき、生物情報とITを組み合わせて、潜在的な生物機能を引き出した「スマートセル」の開発に繋がります。もともと生命機能として持っている機能をいつでも利用できるように設計したものをスマートセルと言います。

(3)これまで扱えなかったデータが扱える

 これまで1つのデータを出すために、1つの解析をすることが定石でした。近年、バイオテクノロジーとITとを融合したことにより、1度の解析で大量のデータを取得することができるようになりました。

 例えば、ゲノム解析がその1例です。大腸菌のゲノムを完全に決定しようとした場合、これまでは少しずつ遺伝子配列データを地道に組み合わせていくという手法が取られ、3, 4年という期間が必要でした。ところが、次世代シークエンサーと言われる機器とバイオインフォマティクスにより、数日で完結できるようになりました。次世代シークエンサーにより大量の遺伝子配列を取得し、バイオインフォマティクスを使ってPC上で遺伝子を再構築することでゲノムを完成することができるようになりました。

 このように、プログラム技術を使って取得したデータを処理することにより意味を持たせられるようになったのです。それに伴い、数KB程度であったデータ容量も数GBを超すことも珍しくありません。このような大容量のデータが保存できるようなったことも大きな要因と言えるでしょう。

(4)もしかして微生物の可能性は無限大??

 このように、バイオテクノロジーとITが融合することで、新たな可能性が広がっていると知っていただけたでしょうか?全体的な潮流を見てきましたが、ここからは微生物分野にフォーカスしていきましょう。

微生物のイメージ

 先ほど、大腸菌のゲノム解析が短期間で完結するということを述べましたが、大腸菌だけではなく、他の微生物もぞくぞくとゲノム解析が進められています。そういった中で、これまでわかっていなかった機能を持っていることがわかり始め、工業的に利用しようとされ始めています。また、これまで培養が難しかった微生物の正体もわかり始め、新たな微生物のカテゴリも誕生しています。

 化学合成でしか製造できないような物質と思われていたものが、実は微生物がもつ特有の代謝経路を使って合成できることがわかりました。また、普段生育する環境では使われていない機能があることもわかってきており、微生物にpHなどのストレスを与えることで機能することもわかってきています。他の事例として、微生物は単一機能していることは今まで知られていましたが、実は微生物が集団で存在する意義も明らかになりつつあります。単一で存在するよりも集団で存在している方が、それぞれの微生物間で共生関係が生まれ、ある種の社会ネットワークを形成しているようなのです。ハチやアリのような社会性ではなく、ある栄養分を変換して、別の微生物がその変換された栄養素を利用するといった経路が明らかになりつつあります。生育するためのコミュニティが形成されている可能性があるということです。私達は、この微生物コミュニティを農業分野で応用できなかと模索しているところです。

 微生物の中には、これまでわかっていなかった機能がまだまだ存在していることが認知されつつあります。そのため、今まで予想打にしなかったことが起こる可能性を秘めています。農業や食品、医療・ヘルスケア分野にも応用されてきています。弊社のBB菌についても、研究を進めていく中で、環境浄化や家庭内の浄化に役立つ微生物を生み出そうとしているところです。

(5)最後に

 バイオテクノロジーとITが融合した研究に関する事例をいくつか挙げてきました。ほんの一部ですが、急速に発展していることがおわかりいただけたでしょうか?これからは、特定の分野だけではなく、ITを始めとしたさまざまな分野を取り入れた研究開発が求められるようになってきそうです。

 弊社の製品をお使いのお客様にも、より使いやすくそして、安全にお使いいただけるように開発を進めていきたいと思います。


tsu

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微生物の未来 〜 その6 代謝と分解 〜

社員ブログ tsu

こんにちは。ビッグバイオ研究部のtsuです。

熊本では、朝晩が冷え込んできましたが、日中はまだまだ暑い日が続いています。

秋の足音が来たかと思えば、すぐに冬が到来しそうな雰囲気です。皆さんのお住まいの地域ではいかがでしょうか?

会社に大きな木があるのですが、3日前にまだツクツクボウシの鳴き声が聞こえていました。

スズムシなどの秋の音色と、セミの夏の音色が同時に聞こえた不思議な朝でした。朝の涼しい時間に、秋の音色を聞きながらゆっくりと本を読む時間も最高ですよ!!

 

  • はじめに

実は、微生物は、高等な動植物が利用できないようなさまざまな物質を分解、代謝して、生態系に有益な栄養源をもたらすことができます。

この分解、代謝によって得られた物質は、環境浄化に使われたり、動植物が利用できる物質に変化していたりします。

今回は、微生物が持つ分解機能と代謝機能について見ていくことにしましょう。

 

  • 代謝とは?

そもそも代謝とは何でしょうか?ほとんどの生物に共通する化学反応で、生命を維持するために行われる合成反応のことです。

その目的には、

  1. エネルギーを獲得すること
  2. 摂取した栄養素を、体を構成するための前駆体へ転換する
  3. 前駆体から体のエネルギーにするために合成する
  4. 細胞が使う生理活性物質を合成または、分解する

主にこれら4つがあります。

例えば、活動するためのエネルギーを作り出す解糖系という代謝経路が存在します。

これはグルコースからいくつかの物質を経由し、ATPと呼ばれるエネルギーが生産されます。

また、有名な代謝機能として発酵や呼吸、そして、光合成のような光化学反応があります。

これらの他にも、ヌクレオチド、アミノ酸、脂肪酸の合成も代謝機能によるものです。

 

 

                    解糖系の化学式及び模式図(wikipediaより参照)

 

つまり代謝とは、新陳代謝を意味し、

      A ⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒ B

Aという物質から始まり、複数の反応を繰り返した後、Bという新たな物質を作り出して利用することになります。

 

  • 分解とは?

一般的な分解は、

                    A ⇒ B + C

に分かれることをいいます。

微生物が分解するということは、微生物の消費活動によって物質を分解し、自然に還ることと言って良いかもしれません。

何か大きな物を小さい物に変換するというイメージを持たれると良いでしょう。

 

  • 微生物を利用することが可能性を広げる!!

微生物の代謝機能と分解機能を探ることは、微生物を利用する可能性を広げてくれます。

実は、代謝と分解は非常に密接な関係にあり、微生物はこれらを同時に行い、生命活動をしていると言えます。

微生物の代謝や分解により産生される産物の正体については、数多く研究され、どの微生物が何を産生するのかということが多くわかってきています。

しかしながら、微生物の細胞内で、その産物がどのような経路を経て、どのように作られているのかということはまだまだ知られていないことが多く存在します。

最近の研究では、ゲノム科学の発展により、遺伝子情報を簡単にかつ大量に調べることができるようになりました。

その結果、これまで知られていなかった代謝機能が解明されつつあり、こんなこともできるのかと言った驚きを与えています。

我々も日々研究に取り組む中で、未知との遭遇を果たします。

こういった未知との遭遇が、微生物の可能性を広げ、新しい環境浄化技術につながるかもしれません。

そしてそこは、微生物が持つ代謝機能と分解機能が切っても切り離せない世界があります。


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微生物の未来 〜 その5 化学肥料と農業と微生物 〜

社員ブログ tsu

こんにちは。ビッグバイオ研究部のtsuです。

 

全国的に梅雨の時期に入りましたね。梅雨の時期はどのようにお過ごしでしょうか?

この時期は程よい湿度と温度でカビは発生しやすくなっています。

微生物を使った防カビに興味がある方は、ぜひ「ビッグバイオ 通販」と検索してみてください。

お役に立てる情報が満載です!

  • はじめに

今回は微生物の未来、その5 化学肥料と農業と微生物と題し、微生物が土を作り、植物を育てる未来を見てくことにしましょう。

読み終わるころには、微生物の新たな可能性を知っていただけると思います!

前回の「その4 微生物が産生するチトクロームP450」をまだご覧になっていない方は、こちらからお読みいただけます。

  • 日本の農業の現状

次のグラフを見てください。

 

Fig. 1 単位面積あたりの農薬使用量の比較

Fig. 2 単位面積あたりの化学肥料使用量の比較

Fig. 1は1haあたりに使われる農薬の量を7ヶ国で比較したグラフです。

日本における農薬の使用量は、国際的にもトップクラスの使用量になっています。

欧米諸国に比べ、非常に多くの農薬を使っていることがわかります。

また、Fig. 2は1haあたりに使われる化学肥料の量を7ヶ国で比較したグラフです。

化学肥料も欧米諸国と比較して多いことがわかります。

 これらの結果からもわかるように、規制の厳しい欧米諸国と比べると、日本の農業は農薬や化学肥料に頼っていると言えます。

ここで問題となるのは、化学肥料や農薬の使用量だけではなく、これらが長い期間使われた土壌についても議論する必要があります。

化学肥料や農薬を長期間に渡って使ってきた土壌は、非常に栄養源が低く、思いも寄らない影響を植物にもたらすことが言われています。

そして土壌に散布された農薬も分解が追いつかず蓄積してくのではと言われており、土が非常に弱った状態になっていると言えるでしょう。

 こういった影響が出ている土壌を使って、いきなり有機農業を始めようとしても、土壌中の栄養の元になる物質が乏しいため、なかなか成果が出ないと考えられます。

有機農業が成功しない一因もここにあるのではないでしょうか?

 最近の報告では、立命館大学生命化学部の久保らによる調査において、「化学肥料と農薬を使ったここ50年間で、ニンジンのビタミンA含有量は約1/3、ほうれん草のビタミンC含有量は約1/4以下に減少している」ということがわかってきています。

 

  • 注目される有機農業とは?

有機農業とは、「農薬や化学肥料に頼らず、自然な土作りをしてから農産物を作る農業形態」です。2006年に「 有機農業推進法」が策定され、この法律の中に次の条件が定義されています。

  • 化学的に合成された肥料や農薬を使用しない
  • 遺伝に組み換え技術を利用しない
  • 農業生産に由来する環境への負荷をできるだけ低減している

この3つの条件をクリアした農法のことになります。

無農薬栽培と混同される方も多いと思われますが、有機農業と無農薬栽培との違いは、無農薬栽培は農産物を作っている期間中に農薬を一切使わないのに対し、

有機農業では、「有機」と認められた農薬のみ使用できます。つまり有機農業=無農薬ということではありません。

有機農業は農林水産省の傘下にある認定機関が許可を出しますが、無農薬栽培は第三者機関による認定はありません。

そのため、優良誤認を防ぐため、「無農薬」や「無化学肥料」などの表示は禁止されています。

  • 微生物が農業を変える!?

化学肥料を慢性的に使用した土壌と人の手が入っていない自然の土壌との大きな違いは「微生物」と言われています。

 かつては、落ち葉や糞尿などの有機物を土壌中の微生物が無機物に分解し、その分解物を使って植物が育っていました。

しかしながら、化学肥料は分解されずに植物に吸収されるため、土壌中には微生物の餌になる有機物がなくなります。

そのため、微生物が生きていけない環境になっているということになります。

先述の立命館大学生命化学部の久保らによる調査によると、日本には微生物が計測できない農地が少なくないと言っています。

その結果、微生物がいない土壌では植物病原菌や害虫が出やすくなるということになります。

これらのことから、先述したように、いきなり有機農業を始めても農産物が育たないので、持続的な農業ができないということになります。

 農業は収穫物の収量も大事ですが、持続することも非常に重要です。

それを解決するための中心的な存在として、「微生物」が重要なキーパーソンと言えるでしょう。

 弊社では「バイオの恵み」という土壌改良材を持っています。

BB菌という微生物の複合体を使った土壌改良材です。

今後、大きな改良を加えて、より多くの農家様にご利用いただけるように考えています。


tsu

研究部に所属するtsuです。時々、社内SEもしています。 研究開発に従事する傍ら、データ分析やアプリケーション開発、データサイエンス関係もしています。研究分野とIT分野を融合するような活動も していきたいですね。 専門はバイオテクノロジーです。

微生物の未来 〜 その4 微生物が産生するチトクロームP450 〜

社員ブログ tsu

タイトル:微生物の未来 〜 その4 微生物が産生するチトクロームP450 〜

 

こんにちは。ビッグバイオ研究部のtsuです。

2022年最初のブログになります。遅くなりましたが、本年もよろしくお願いします!

 

世界情勢が大きく動いて、いろいろと考えることが多くなったのではないでしょうか?

これに関連しているのかどうか不明ですが、急激にサイバー攻撃も増えてきていますね。

どこで何が繋がっているかわからないもので、ちょっとしたことが、ニュースの尻尾になるかもしれませんよ!

 

・ はじめに

今回は微生物の未来、その4 微生物が産生するチトクロームP450と題し、チトクロームP450というタンパク質について見ていくことにしましょう。きっと、微生物のさらなる可能性を感じて、微生物をより理解していただけると思います!

 

前回の「その3 微生物と2021年のノーベル化学賞」をまだご覧になっていない方は、こちらからお読みいただけます。

 

・ チトクロームP450とは?

Fig. 1 チトクロームP450の高次構造

リンクによる

 

チトクロームP450は、有機化合物に一原子酸素を導入するモノオキシゲナーゼ反応を触媒する酵素の総称です。単にP450やCYP(シップ)と呼ばれることがあります

(以下P450とする)。異物代謝や二次代謝産物の生合成など多岐にわたる生命現象を支えており、カビ、酵母、植物、昆虫、魚類、および哺乳動物にいたるまであらゆる生物に存在しています。

還元状態で一酸化炭素と結合したとき、450nm(可視光線の青色に近い波長)に吸収極大を示すことから、チトクロームP450という名前がつけられました。チトクロームとは、ヘモグロビンと類似した構造を持つタンパク質で、細胞呼吸における電子伝達系に関与しています。ところが、チトクロームP450は従来のチトクロームとは本質的に異なります。

チトクロームP450は生体内で多くの生理機能を持っています。例えば、ステロイドホルモンの生合成、胆汁酸の生合成、プロスタグランジン、トロンボキサン、ロイコトリエンなどの生理活性物質の合成、活性型ビタミンD3の生合成などに関与しています。このことから、薬物代謝のための酵素として考えられた時代もあるようです、現在は、薬物代謝のみならず、非常に有用性のある酵素であると認識されています。この酵素の反応パターンは、芳香環の水酸化、側鎖の水酸化、o-脱アルキル、脱ニトロ、脱ハロゲンなど多種多様で、生物の有機化合物分解にとってとても都合の良い反応系になります。

 

・ 微生物とチトクロームP450

P450を作り出す微生物として、Bacillus属、Streptomyces属、Mycobacterium属、Rhodococcus属、Pseudomonas属などが報告されています。

属を超えて広く分布していると考えられていますので、今後さらに多くの微生物にP450が発見されることが期待されます。

ここで、実際にどのような場面で役立っているのか例を見ていきましょう。

 

1. 農薬の分解

防虫剤として使われているカンフルはPseudomonas属により、酢酸とイソ酪酸にまで分解されます。

また、除草剤であるスルホニルウレアはStreptomyces属によって代謝されます。

 

2.有機塩素化合物の分解

Rhodococcus chlorophenolicusによって、ポリクロロフェノールを代謝する事が知られており、クロロフェノールはMycobacterium fortuitumによって代謝されることがわかっています。

また、土壌を燻蒸消毒する農薬であるクロルピクリンやBTM(ブロモトリクロロメタン)、DBPC(1,2-ジブロモ-3-クロロプロパン)なども代謝されることがわかっています。

 

3.芳香族炭化水素類の代謝

殺虫剤であるプレコセン2やベンゾピレン、エリスロマイシン、ワーファリン、テストステロンなどを代謝することがわかっています。

 

4.その他の有機化合物の分解

石油成分であるアルカン類を分解することがわかっています。オクタンやヘキサデカンなどが対象になるようです。

 

このように、さまざまな種類の有機化合物が対象になることがおわかりになることでしょう。

 

・ 最後に・・・・・

現在、日常的に何万種類という化学物質が使用されていると言われています。これら化学物質はさまざまな過程で環境中に放出され、大気圏や水圏、土壌などから検出されています。

環境中に放出された化学物質を除去することは非常に困難で、除去するため新たな化学物質を使用することもあります。ところが、一部の自然界に放たれた化学物質は、微生物が作用して分解・除去され環境に戻されていることも事実です。例えば、クロロホルム(1)、トリクロロエチレン(2)、テトラクロロエチレン(3)、ジクロロメタン(4)を始め、有機塩素化合物やポリビニルアルコール(5)、有機水銀(6)、有機スズ(7)、PCB(8)などを分解することも知られています。これら化学物質の分解に関与しているのが、今回のテーマであるチトクロームP450なのです。

ビッグバイオではBB菌を環境修復技術として利用しています。昨今、さまざまなバイオレメディエーション技術が注目される中、ビッグバイオは20年以上に渡り、微生物による環境浄化技術を開発、実践してきました。今回紹介してきたチトクロームP450に関する知見は、日々更新されていますが、推測の域を超えきれていない知見もたくさんあります。環境中で微生物がチトクロームP450をどのように作り出しているのか不明点が多いため、もし解明することができれば、環境浄化技術をより確かな技術として確立できると期待できます。

 

参考文献

  1.  Bagley, D. M. and Gossett, J. M.(1995)Chloroform degradation in methanogenic methanol enrichment cultures and by Methanosaricina barkeri 227.Appl .Environ. Microbiol.61 : 3195-3201
  2. Arciero, D., Vannelliti, T., Logan, M. and Hooper, A. B. (1989)Degradation of trichloroethylene by the ammonia- oxidizing bacterium Nitrosomonas europaea. Biochem. Biophys. Res. Commun. 159 : 640-643
  3. Freedman, D. L. and Gossett, J. M.(1989)Biological reductive dechlorination of tetrachloroethylene and trichloroethylene to ethylene under methanogenic conditions. Appl. Environ. Microbiol . 55 : 2144-2151
  4. Vannelli, T., Logan, M., Arciero, D. M. and Hooper, A. B.(1990)Degradation of halogenated aliphatic compounds by the ammonia-oxidizing bacterium Nitrosomonas europaea. Appl. Environ. Microbiol . 56 : 1169-1171
  5. Sakazawa, C., Shimano, M., Tanigichi, Y. and Kato, N.(1981)Symbiotic utilization of polyvinyl alcohol by mixed culture. Appl. Environ. Microbiol .37 : 747-756
  6. Olson, B. H., Barkay, T. and Colwell, R. R.(1979)Role of plasmids in mercury transformation by bacteria isolated from the aquatic environment. Appl. Environ. Micribiol .38 : 478-485
  7. 篠田純男, 大 木宏 有機スズ化合物と微生物 水環境学会誌15:505-510
  8. Ahmed, M. and Focht, D. D.(1973)Degradation of polychlorinated biphenyls by two species of Achromobacter. Can. J .Microbiol .19 : 47-52

tsu

研究部に所属するtsuです。時々、社内SEもしています。 研究開発に従事する傍ら、データ分析やアプリケーション開発、データサイエンス関係もしています。研究分野とIT分野を融合するような活動も していきたいですね。 専門はバイオテクノロジーです。