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微生物の未来 〜 その13 未来を変える小さな生き物たち 〜

社員ブログ tsu

こんにちは、tsuです。

早いもので2025年がもう半分過ぎてしまいました。

例年になく早い梅雨明けと同時に、暑い夏の到来が季節を

感じさせるこの頃です。熱中症対策など、暑さへの対策を

怠らないように気をつけましょう。やっぱり、「備えておく」

ということが大切なのかもしれません。

 

1.はじめに

前回は、微生物研究(前回の記事はこちら)における最新の研究動向について紹介しました。

これからの動向が楽しみでもあります。

今回は、この微生物という小さな生き物たちのことを少しだけ掘り下げてご紹介したいと思います。

これまでご紹介した微生物のすごいパワーをおさらいして、そんな小さな存在たちが

未来を大きく変える力を持っていると改めて知っていただけることでしょう。

実は、体の中にも微生物の存在がかかせません!

腸の中には「腸内フローラ(腸内細菌叢)」と呼ばれる微生物の集合体があり、

私たちの消化・免疫・心の健康まで影響を与えています。

実際、人間の体の中には100兆個以上の微生物がいるとも言われています。

 

2.身近な「微生物のすごい力」

(1) 発酵食品を作るヒーロー!

発酵とは、微生物の力で食べ物の成分を変化させること。
この働きで、食材が「保存しやすく」「美味しく」「栄養価の高い」ものへと変身します。

例えば:

  • 納豆 → 納豆菌(バチルス属)によって、大豆が発酵し、ネバネバ食感と特有の香りが生まれます。

  • 味噌や醤油 → 麹菌(アスペルギルス・オリゼー)や酵母によって発酵し、深い旨みを持つ調味料になります。

  • ヨーグルト → 乳酸菌(ブルガリア菌、サーモフィルス菌など)が牛乳を発酵させ、酸味ととろみを生みます。

  • パン → 酵母菌(サッカロミセス・セレビシエ)が糖を分解し、二酸化炭素を発生させることで生地が膨らみます。

酵母 → 実はビールやワインなどのアルコールも微生物の力でつくられています!

 

(2) 掃除や消臭にも大活躍!

最近では、バイオ洗剤やバイオ消臭スプレーと呼ばれる商品に注目が集まっています。
これらは、悪臭の原因となる有機物を、微生物が「分解して消す」という自然のメカニズムを利用しています。

例えば:

  • トイレやペットの臭い → 微生物がアンモニアや硫黄化合物を分解

  • 排水管のぬめり → バイオフィルム(微生物の膜)が働いて汚れを減らす

これにより、化学薬品を使わずに、地球にも人にもやさしいお掃除が可能になります。

また、その環境に適した「菌バランス」をオーダーメイドする時代がくるかもしれません!

 

(3) 微生物が支える持続可能な農業

現在の農業では、化学肥料や農薬が土壌や水を汚染する原因になることもあります。
そこで登場するのが、**微生物を使った「バイオ農業」**です。

こんな働きがあります:

  • PGPR(植物成長促進菌):植物の根に住み、栄養を届けたり病気を防いだりする

  • 窒素固定菌:空気中の窒素を植物が使える形に変える

  • 放線菌・光合成細菌:土壌環境を改善し、作物の味や収穫量を向上させる

→ これにより、環境への負担を減らしながら、安全でおいしい作物がつくれる未来が期待されています。

 

(4) 健康や医療に革命を起こす

腸内細菌は「第2の脳」とも呼ばれ、体だけでなく心の健康にも関係しています。
うつ病、アレルギー、糖尿病、肥満…こうした病気が「腸内フローラの乱れ」と関連していることが明らかになっています。

注目の研究:

  • マイクロバイオーム医療:腸内細菌のバランスを整えることで、個人に最適な治療法を提供

  • 便微生物移植(FMT):健康な人の腸内細菌を移植して病気を治す治療法

  • プロバイオティクス/プレバイオティクス:善玉菌を増やす食品・サプリメントの活用

→ 今後は「あなた専用の菌バランス」に基づいた健康管理が当たり前になるかもしれません!

 

(5) 地球を守る環境の救世主

微生物には、環境中の汚染物質を分解したり、無害化したりする力を持つ種類も多く存在します。

代表的な例:

  • 油を分解する菌:原油流出事故で活躍(例:アルカリゲネス属)

  • 重金属を吸収する菌:土壌汚染や鉱山の浄化

  • プラスチック分解菌:ポリエステルなどを自然に分解(例:イデオネラ・サカイエンシス)

→ 微生物を使った「バイオレメディエーション」は、環境浄化の希望として注目されています。

 

(6) 宇宙でも微生物が必要!

将来、火星や月で人類が生活することを考えると、限られた資源を循環させる技術が必要になります。
そこで、微生物の出番!

微生物の宇宙での役割:

  • 廃棄物の分解と再利用

  • 酸素の生成(藻類)

  • 栄養素を含む作物の栽培サポート

  • 自己修復する素材の開発(バイオコンクリート)

NASAやJAXAでも、微生物の研究が進められており、宇宙開発の裏の立役者となっています。

 

3.まとめ 「菌とともに生きる未来」

微生物は、これまで私たちの生活を支えてきた、そしてこれからの未来を変えていく、すごい存在です。

見えないけれど、確かにそこにいて、私たちと一緒に生きている。
これからの時代、微生物の力を上手に活かすことで、地球にも人にも優しい社会が実現していくでしょう。

そしてこれからの未来では、環境問題、食料危機、健康、宇宙開発など、あらゆる課題を解決するカギになっていくでしょう。

目に見えないけど、確かにそこにいる。
微生物と共に生きる時代は、もう始まっています。

さあ、今日から「菌とともに生きる未来」を想像してみませんか?


tsu

研究部に所属するtsuです。時々、社内SEもしています。 研究開発に従事する傍ら、データ分析やアプリケーション開発、データサイエンス関係もしています。研究分野とIT分野を融合するような活動も していきたいですね。 専門はバイオテクノロジー・生命科学です。