微生物の未来 〜 その8 微生物のネットワーク 〜
こんにちは。tsuです。
最近、関東から東北、九州でも鹿児島県で地震が続いていますね。
熊本地震を経験した私ですが、今でもあの時のことを鮮明に覚えています。
やはり、「備えあれば憂いなし」で、日頃から非常食や避難場所・経路、家族間の連絡方法などを確認することがとても大切です。
事前準備がある意味、明暗をわけるのかもしれません。
1.はじめに
前回、バイオテクノロジーとITが融合することで、新たな可能性をもった研究が始められているとお伝えしました。
これまで微生物の研究というのは、ある1種類の微生物を単離し、この単離してきた微生物について研究を進めていくという形がほとんどでした。
ところが近年、微生物同士や植物同士、さらには微生物と植物間において、それらが産生する化学物質を使って、お互いコミュニケーションを取っていることが明らかになってきました。
そのため単体でいるときよりも、集合して共生関係を形成することで、これまで想像もできなかったような働きをすることが示されつつあります。
そこで今回は、そんな新しい研究分野から派生した「生物ネットワーク」と呼ばれる分野、つまり微生物間の共生関係が何を意味するのかをご紹介したいと思います。
2.生物ネットワークとは?
Oxford Languagesによれば、ネットワークは、「通信・放送・輸送などに関し、連絡を保って網状になっている構成」という意味があります。一般的には、このような意味で使われていると思います。では、生物ネットワークとはどのような意味なのでしょうか?
生物におけるさまざまな生命現象や病気の発症などは、遺伝子、タンパク質、代謝化合物といった、さまざまな生体分子が複雑な相互作用を起こした結果となります。また、生物や他の生物や環境と複雑に相互作用することで、生態系を織りなしています。
このように構成された生命現象や生態系の動きのことを「生物ネットワーク」と呼びます。つまり、それぞれの生体分子、生物、そして環境が織りなす相互作用のことになります。
ネットワークのイメージ図
3.微生物を活用するには単体?それとも複合体?
微生物を活用した食品と言えば、酒や漬物などがすぐに思いつくのではないでしょうか。
漬物の酸味には乳酸菌が、酒のアルコールには麹菌や酵母菌が使われています。いずれも1種類で発酵させています。
ところが、自然界には微生物が1種類だけで活動していることはなく、ほとんどが何らかの集合体を形成し、共生しています。
土壌中だけではなく、植物体、水中、空気中も同様です。また皮膚の表面に存在する常在菌も1種類だけではなく、複数種類存在していることがわかっています。
微生物1種類だけを活用することは経験的に行われており、非常に身近なことです。
しかしながら、複数種類の微生物が共生することによる意味は、ほとんど解明されておらず、今後さらなる知見が得られることが期待されています。
4.微生物が集団で共生する意味とは?
微生物を1種類だけで活用することは、日常的に行われています。
ハチやアリは集団行動することで社会性を見出していますし、ヒトも同様です。
ヒトと同様、多種多様な微生物があり、それらが共生しています。
人種のるつぼ、現在では、人種のサラダボウルという表現が多いかもしれませんが、さまざまな微生物が混在しています。
では、微生物が集団で共生することには、どのような意味があるのでしょうか?
特に社会性を見出すわけでもありません。
2.生物ネットワークで述べたように、生物はさまざまな生体分子を作りながら生命活動をしています。
それは微生物でも同じです。
微生物は種によって作り出すことができる生体分子が限られており、種間によって生体分子の合成に得意、不得意が存在するのです。
この得意、不得意を互いに補うために共生していると考えられています。
現に、ある1つの物質を複数の微生物間で利用しているということも知られつつあります。
要は、いかに効率よく栄養源が得られるような環境に身を置き、生命活動を維持できるかということなのかもしれません。
5.最後に
今回は生物ネットワークを踏まえた微生物のネットワークについて、解説してきましたが、いかがだったでしょうか?
難しく感じられた方もいらっしゃったかと思われますが、簡単に言えば、微生物が集団で共生することは、とても意味があるということを知っていただければ幸いです。
微生物の相互作用をもっと理解することができれば、土壌の改善や空間中の改善、はたまた、環境の改善にもつながるかもしれません。
微生物間の相互作用のバランス、そして数学的な予測モデルを見出すことができれば、環境浄化をするための微生物集団を設計したり、土壌中の微生物集団を再生させたりするための設計も可能になるかもしれません。